【大江実験線から東部丘陵線へ】
大江実験線で使ったHSSTには2種類の車両があります。HSST−100Sと100Lです。100Sは長さ8.5m、幅2.6m、高さ3.4m、車重11トン(満車時15トン)で乗車定員67人。6個のモジュールを持ち、半径25mのカーブを回れました。100Lは長さ14m、定員110名、10個のモジュールを持ち、リニモの原型となりました。
大江実験線は大江から東名古屋港まで1.5キロの線路ですが、急曲線である25R、100R、急勾配の60‰、70‰、分岐装置を持ち、ジェットコースターのようだと評されていました。ここでの走行実績は100S100L合わせて12万キロ、42000人が試乗しました。
※このあたりは中部HSST(株)のHPに画像あり。
※講義ではここで「夢ののりもの CHSST」のビデオを見る。HSSTの開発史と大江実験線での実験概要を見る。
東部丘陵線に使用する車両は3機種が検討されましたが、急勾配や環境面を考えてHSSTが選ばれました。藤が丘から八草まで9.2キロ、営業距離は8.9キロを15分で結びます。高架ですが、道路幅の狭い1.3キロの区間は地下です。総事業費は1000億円、内インフラ部に600億円かかりました。輸送量は1時間3500人、1日3万人ですが、いまは1時間に5000人、1日に100万人運んでいます。
※事業の経緯等は愛知高速交通(株)のHPを参照されたい。
愛知高速交通は第3セクターですから神田知事が社長です。(→概要)軌道上にはシーサスクロスという分岐が2カ所、三枝分岐が1カ所あります。三枝分岐の先は車両基地で、夜は全車両が入庫します。高架の形式は3タイプあります。橋脚が道路の中央にあるのが基本パターンですが、道路の片側にあるもの、道路をまたぐ形の橋脚もあります。駅の基本構造は3階建てです。地下区間はめがねシールドという工法で作られており、幅が12mで収められています。
車両のデザインは愛芸大でまとめられました。100Lとは、正面をガラス張りにし、鋭角的なデザインとなりました。車体の小ささを感じさせない内部デザインです。運転席には手動の装置がありますが、普段は使いません。100Lで使われていなかったATO(自動列車運転装置)とATC(自動列車制御装置)がリニモには使われています。先行車両は豊川の日本車輌で作られ、大江実験線で実験に使われました。
リニモのランカーブはこんなぐあいです。
縦軸は速度、横軸は距離で、駅から駅までの走行を表しています。一番高いところは時速80キロです。これ以上のスピードが出ないように、線路に電気的な網が張ってあります。リニモの駅ではホームにもドアがありますから列車のドアがずれて止まらないよう、駅の手前付近に4カ所のポイントが設けてあり、誤差が30センチ以内に収まるようにしています。リニモは無人ですが安全性の高いシステムを構築しています。
車両基地は万博会場の東端にあり、広さは3万平方メートル。検査、保守、修理、洗車ができます。リニモは車庫にはいるまで自動運転です。
車両編成は01から09までの9編成。それぞれが3両です。08までは愛知高速交通のものですが、09は万博協会が作りました。
いまは5分間隔で8編成が5分間隔で走っています。車両にはがんばって走ってもらって、万博が終わったらごくろうさんと言ってやりたいです。
※ここでまたビデオ。「走り始めた21世紀」というタイトルで、愛知高速交通作成のものである。リニモの快適性、乗り心地、加速性にも触れていた。
HSSTの開発から30年、毎日100万人の人に利用され、開発冥利に尽きません。今後は第2、第3、第4のシステムに展開していきたいと思います。今のところ打診のあるのはすべて海外です。台湾、中国、韓国から新しい都市交通として打診があります。また空港アクセスなど、高速性の要求されるシステムで時速200キロを目指したいとも思います。